テルミちゃんの知って得する知恵袋「賃貸アパートの退去トラブル」
大雪に悩まされた冬も終わり、ようやく春を迎えます。春は就職や転勤、進学などで賃貸アパートから引っ越しする方が多くなる季節です。こうした中、退去時に一生懸命掃除をしてきれいな状態で引き渡したはずなのに、後になって高額な原状回復費用を請求されたというトラブルが後を絶ちません。
次のような相談がありました。
ペットの飼育が可能な物件で猫を2匹飼っていました。飼育可の条件として退去費用に3万円を上乗せするという説明を受け、了承して入居しました。猫は未去勢のオスだったため、あちらこちらにマーキングの尿を吹き付けていましたが、その都度清掃はしていました。3年ほど住んで退去しましたが、退去してほどなく60万円を超える原状回復費用の精算書が届きました。同封された見積書には、ハウスクリーニング代のほか、クロスやクロスの下の石膏ボードの張替えなど高額な内訳が記載されており、とても納得できる内容ではないので支払いたくないという相談です。
アパートの借主は、退去時に部屋を入居前の状態に戻して貸主に返還する「原状回復義務」を負います。ただし、日常生活を送るうえで自然に生じた損耗(通常損耗)や年月の経過とともに生じた損耗(経年変化)、借主に責任のない事由による損耗については、借主は原状回復義務を負いません。もっとも、事例のようなペットが原因の損耗やタバコによるヤニ汚れなどは、通常損耗とはいえず借主の責任となります。
国土交通省では、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を策定し、原状回復の費用負担について一定の基準を示しています。壁や天井のクロスなどでは、借主の負担割合は居住した期間に応じて減少し、仮に入居時に100%の価値がある状態だったとしても、経過年数6年で残存価値は1円として算定されますので、それに見合った請求額かどうか確認しましょう。
一方、入居時に借主、貸主の双方が合意した特約があれば、ガイドラインにかかわらず特約の内容が有効になります。退去時のトラブルは、実は入居時に始まっているとも言えますので、契約の際は退去のことも考えて契約内容をよく確認しましょう。
困った時は、早めに消費者ホットライン188にご相談ください。