消費生活条例
前文
かつて、この地には、日々の生活に必要なものを、自分たちの手で獲得していた豊饒(ほうじょう)な縄文の時代がありました。
現代の社会では、私たち県民は、毎日の生活を送るうえで必要不可欠な衣食住を始め様々なサービスに至るまで、事業者からの供給に依存して生活しています。すべての県民は消費者です。
二十世紀後半の高度経済成長は、我が県にも大量生産・大量販売そして大量消費の高度消費社会をもたらし、私たちは、消費生活において物質的な「豊かさ」や「便利さ」・「快適さ」を享受してきました。しかし、その一方では、県民の安全や利益を損なう様々な問題も発生してきています。また、私たち一人一人の行動が地球環境に大きな影響を与えていることから、私たち自身の生活様式が問われるようになってきました。
青森県においても、国際化、情報化、高齢化などの進展に伴って県民の消費生活を巡る問題も複雑化、多様化そして広範化してきています。
そのような中にあって、次の世代に思いをはせるとき、私たちは、県民の一人一人が健康で、安全かつ快適な生活を送ることができるような社会の実現を目指していかなければなりません。
そのためには、すべての県民がこの地で安心して生活できるよう社会環境の整備を図るとともに、私たち自身も主体的に行動していくことが望まれます。
このような認識の下に、消費者の権利を確立して県民の消費生活の安定と向上を図り、より豊かで潤いのある住みよい青森県を創造するため、この条例を制定します。
第1章 総則
第1条
この条例は、県民の消費生活に関する県及び事業者の果たすべき責務並びに消費者の果たすべき役割を明らかにするとともに、県民の消費生活に関する施策について必要な事項を定めることにより、県民の消費生活の安定及び向上を図ることを目的とする。
(基本理念)
第2条
この条例の目的を達成するに当たっては、県、事業者及び消費者の相互の信頼を基調とし、次に掲げる消費者の権利の確立を図ることを基本とするものとする。
- 消費生活において、商品又は役務により、生命、身体及び財産が侵されない権利
- 消費生活において、商品又は役務について、適切に選択するため、適正な表示を行わせる権利
- 消費生活において、商品又は役務の取引について、不当な方法から保護され、及び不当な条件を強制さ れない権利
- 消費生活において、商品若しくは役務又はこれらの取引行為により不当に受けた被害から、公正かつ速やかに救済される権利
- 消費生活において、商品若しくは役務又はこれらの取引行為について必要な情報を速やかに提供される権利
- 消費生活において、必要な知識及び判断力を習得し、主体的に行動するため、消費生活に関する教育を受け、及び学習の機会を提供される権利
- 消費生活において、意見が適切に反映される権利
(県の責務)
第3条
県は、消費生活に関する総合的かつ広域的な施策を策定し、及びこれを実施するものとする。
(市町村の責務)
第4条
(削除)
(事業者の責務)
第5条
- 事業者は、事業活動を行うに当たって、県が実施する消費生活に関する施策に協力するよう努め、並びにその供給する商品及び役務について、危害の防止、品質その他の内容の向上、適正な表示の実施、公正な取引の確保、正確な情報の提供等必要な措置を講ずるとともに、価格の安定及び流通の円滑化に努めなければならない。
- 事業者は、その供給する商品及び役務並びにこれらの取引行為について、消費者からの苦情を適切かつ迅速に処理し、及び消費者の意見を反映させるよう努めるとともに、これらに必要な体制の整備に努めなければならない。
(消費者の役割)
第6条
消費者は、県が実施する消費生活に関する施策に協力するよう努めるとともに、自ら進んで消費生活に関する必要な知識を習得し、及び主体的に行動するよう努めることによって、消費生活の安定及び向上に積極的な役割を果たすものとする。
(環境への配慮)
第7条
- 県は、消費生活に関する施策の策定及び実施に当たって、消費生活が環境に及ぼす影響について配慮するものとする。
- 事業者は、事業活動を行うに当たって、その供給する商品及び役務が消費生活により環境に及ぼす影響について配慮するよう努めなければならない。
- 消費者は、その消費生活が環境に及ぼす影響に配慮して消費生活を営むよう努めなければならない。
(基本計画)
第8条
- 知事は、消費生活に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、その施策に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。
- 消費生活に関する施策の大網に関する事項
- 消費生活に関する施策の実施についての総合調整に関する事項
- 消費生活に関する苦情及び相談を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備に関する事項
- その他消費生活に関する施策の推進に関する重要な事項
- 基本計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
- 知事は、基本計画を定めようとするときは、あらかじめ、青森県消費生活審議会(以下「審議会」という。)の意見を聴かなければならない。
- 知事は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
- 前二項の規定は、基本計画の変更について準用する。
第2章 危害の防止、規格等の適正化、不当な取引行為等
(危害に関する調査)
第9条
- 知事は商品又は役務が消費者の生命、身体又は財産に危害を及ぼす疑いがあると認めるときは、速やかに、当該商品又は役務について必要な調査を行わなければならない。
- 知事は、前項の調査のため必要があると認めるときは、当該商品又は役務を供給する事業者に対し、当該商品又は役務についてその安全性を明らかにするよう求めることができる。
(危害の防止の措置)
第10条
- 知事は、商品又は役務が消費者の生命、身体又は財産に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認める場合において、当該危害を防止するため必要があると認めるときは、法令に特別の定めがある場合を除き、当該商品又は役務を供給する事業者に対し、書面により、当該商品又は役務の供給の中止、当該商品の回収その他消費者の生命、身体又は財産に対する危害を防止するために必要な措置を講ずるよう勧告することができる。
- 知事は、消費者の生命、身体又は財産に対する危害を防止するため必要があると認めるときは、前条の規定による調査の概要又は前項の規定による勧告の内容を公表することができる。
(重大危害に関する公表)
第11条
知事は、商品又は役務が消費者の生命又は身体に重大な危害を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認める場合において、当該危害を防止するため必要があると認めるときは、法令に特別の定めがある場合を除き、直ちに、次に掲げる事項を公表しなければならない。
- 当該商品又は役務の名称
- 当該商品又は役務を供給する事業者の氏名または名称及び住所
- 当該危害の内容
- その他当該危害を防止するために必要な事項
(規格の適正化)
第12条
知事は、商品又は役務について品質その他の内容の向上及び消費生活の合理化を図るため必要があると認めるときは、法令に特別の定めがある場合を除き、事業者に対し、その供給する商品又は役務について適正な規格を整備するために必要な助言及び指導を行うことができる。
(表示の適正化)
第13条
- 知事は、商品の使用又は役務の利用により消費者の生命、身体又は財産に対する危害が発生するおそれがあると認めるときは、法令に特別の定めがある場合を除き、事業者に対し、その供給する商品又は役務について当該危害の発生を防止するための使用又は利用の方法等に関して適正な表示をするために必要な助言及び指導を行うことができる。
- 前項に規定するもののほか、知事は、消費者が商品の購入若しくは使用又は役務の利用に際しその選択等を誤ることがないようにするため必要があると認めるときは、法令に特別の定めがある場合を除き、事業者に対し、その供給する商品又は役務について品質、機能、価格、量目その他の事項の適正な表示をするために必要な助言及び指導を行うことができる。
(容器及び包装の適正化)
第14条
知事は、消費者が商品の購入に際しその内容、量目等を誤認することがないようにするため必要があると認めるときは、法令に特別の定めがある場合を除き、事業者に対し、その供給する商品の容器及び包装を適正化するために必要な助言及び指導を行うことができる。
(商品等の規格・基準の設定)
第15条
- 知事は、商品又は役務について品質その他の内容の向上、消費者の合理的な選択の確保その他消費生活の安定及び向上を図るため必要があると認めるときは、法令に特別の定めがある場合を除き、商品又は役務について、事業者が遵守すべき規格並びに表示、容器及び包装の基準(以下「商品等の規格・基準」という。)を定めることができる。
- 知事は、商品等の規格・基準を定めようとするときは、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。
- 第1項の規定による商品等の規格・基準の設定は、告示で行われなければならない。
- 前二項の規定は、商品等の規格・基準の変更及び廃止について準用する。
(商品等の規格・基準の遵守に関する措置)
第16条
知事は、商品又は役務が前条第1項の規定により定められた商品等の規格・基準に適合していないと認めるときは、当該商品又は役務を供給する事業者に対し、書面により、当該商品等の規格・基準を遵守するよう勧告することができる。
(不当な取引行為の指定)
第17条
- 知事は、事業者が消費者との間で行う商品又は役務の取引に関する行為で次の各号のいずれかに該当するものを不当な取引行為として指定することができる。
- 消費者に対し虚偽の事実を告げ、又は誤信を招く情報を提供し、消費者を威迫し、又は心理的に不安な状態に陥れる等の不当な方法で、契約の締結を勧誘し、又は、契約を締結させる行為
- 消費者に著しい不利益をもたらす不当な内容の契約を締結させる行為
- 契約(契約の成立について当事者間に争いのあるものを含む)に基づく債務の履行を不当に強要し、又は契約に基づく債務の履行を不当に拒否し、若しくは遅延させる行為
- 消費者の正当な根拠に基づく契約の申込みの撤回、契約の解除若しくは契約の取消し(以下「申込みの撤回等」という。)を妨げ、又は申込みの撤回等により生じる債務若しくは契約が無効であることに基づく債務の履行を不当に拒否し、若しくは遅延させる行為
- 第15条第2項及び第3項の規定は、前項の不当な取引行為の指定、変更及び廃止について準用する。
(不当な取引行為の改善措置)
第18条
知事は、事業者が前条第1項の規定による指定をされた不当な取引行為を行っていると認めるときは、法令に特別の定めがある場合を除き、当該事業者に対し、書面により、当該不当な取引行為の中止その他の改善措置を講ずるよう勧告することができる。
(生活必要商品等の価格動向の調査等)
第19条
- 知事は、消費者の日常生活に必要な商品又は役務(次項において「生活必要商品等」という。)について、必要に応じて、その価格の動向、需給の状況、流通の実態等を調査するものとする。
- 知事は、生活必要商品等の価格の安定を図り、又は消費者の生活必要商品等の合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、前項の規定による調査の概要を公表するものとする。
(生活必要商品の供給要請)
第20条
知事は、消費者の日常生活に必要な商品(以下「生活必要商品」という。)の円滑な供給を確保するため必要があると認めるときは、当該生活必要商品に係る事業者に対し、その供給について協力を求めるものとする。
(生活必要商品の供給に係る措置)
第21条
知事は、生活必要商品が著しく不足し、若しくはその価格が著しく上昇し、又はこれらのおそれがあると認める場合において、事業者が不当な買占め若しくは売り惜しみにより当該生活必要商品を多量に保有し、又は当該生活必要商品を著しく不当な価格で販売していると認めるときは、法令に特別の定めがある場合を除き、当該事業者に対し、書面により、これらの行為を是正するよう勧告することができる。
第3章 消費者の被害の救済
(苦情等の処理)
第22条
知事は、消費者から事業者の供給する商品若しくは役務若しくはこれらの取引行為に関する苦情の申出又は消費生活に関する相談があったときは、速やかに、その内容を調査し、これらを解決するために必要な措置を講ずるものとする。
(審議会のあっせん及び調停)
第23条
- 知事は、前条に規定する消費者からの苦情を解決するため必要があると認めるときは、当該苦情を審議会のあっせん又は調停に付することができる。
- 審議会は、あっせん又は調停のため必要があると認めるときは、当該苦情に係る事業者、消費者その他の関係者の出席を求め、その意見を聴くことができる。
(訴訟の援助)
第24条
- 知事は、消費者が事業者を相手として訴訟を提起する場合又は事業者に訴訟を提起された場合において、当該訴訟が次に掲げる要件のすべてに該当するときは、当該消費者に対し、当該訴訟を提起し、及び維持し、又は当該訴訟に応じるために必要な資金の貸付けその他の援助を行うことができる。
- 前条第1項の規定によりあっせん又は調停のため審議会に付された苦情に係る訴訟であること。
- 審議会において、その援助をすることが適当であると認めた訴訟であること。
- 知事は、前項の規定よる貸付を受けた者が、次の各号のいずれかに該当するときは、当該貸付けに係る返還債務の全部又は一部を免除することができる。
- 当該訴訟の結果、当該訴訟に係る費用を償うことができないとき。
- 死亡したとき。
- 災害、病気その他の理由により返還が困難となったとき。
- 前二項に定めるもののほか、第1項の規定による貸付けに関し必要な事項は、規則で定める。
第4章 消費生活に関する情報提供、教育・学習等
(情報の収集及び提供)
第25条
知事は、商品又は役務について品質、機能、価格及び量目並びにこれらの表示の状況、取引方法その他必要と認められる事項に関して試験、検査、調査等を行い、消費生活に関する情報を収集するとともに、消費生活の安定及び向上を図るために必要な情報を提供するものとする。
(教育機会の活用及び学習の支援)
第26条
- 県は、消費者が消費生活を営む上で必要な知識及び判断力を習得し、消費生活において主体的に行動し、並びに消費生活が環境に及ぼす影響についての理解を深めることができるようにするため、消費生活に関する教育用の資料の提供その他教育の機会を活用するために必要な措置を講ずるものとする。
- 県は、消費生活に関する学習の機会の提供その他消費生活に関する消費者の自主的な学習の支援のために必要な措置を講ずるものとする。
(消費者の組織活動の促進)
第27条
県は、消費生活の安定及び向上を図るための健全かつ自主的な消費者の組織活動が促進されるようにするため必要な情報の提供その他の援助の措置を講ずるよう努めるものとする。
(知事への申出)
第28条
- 消費者は、この条例に規定する措置が採られていないことにより、第2条各号に掲げる消費者の権利が侵害され、又は侵害されるおそれがあるときは、知事に対し、その旨を申し出て、適当な措置を採るべきことを求めることができる。
- 知事は、前項の規定よる申出があったときは、必要な調査を行い、その申出に理由があると認めるときは、この条例に基づく措置その他必要と認める措置を採るものとする。
第5章 雑則
(国及び他の地方公共団体との協力)
第29条
- 知事は、消費生活の安定及び向上を図るため必要があると認めるときは、国に対し必要な措置を講ずるよう要請し、及び他の地方公共団体に協力を求めるものとする。
- 知事は、国又は他の地方公共団体から消費生活の安定及び向上を図ることを目的に協力を求められたときは、これに応ずるよう努めるものとする。
(立ち入り調査等)
第30条
- 知事は、この条例の施行に必要な限度において、事業者に対し、その業務に関し報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に事業者の事務所、事業所その他その事業を行う場所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を調査させ、若しくは関係者に質問させることについて協力を求めることができる。
- 前項の規定により立入調査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
(公表)
第31条
- 知事は、事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その旨を公表することができる。
- 正当な理由がなく第9条第2項の規定よる要求に応じないとき。
- 正当な理由がなく第10条第1項、第16条、第18条又は第21条の規定による勧告に従わなかったとき。
- 正当な理由がなく前条第1項の規定による報告若しくは資料の提出の要求又は調査若しくは質問についての協力に応じないとき。
- 前条第1項の規定による報告若しくは資料の提出の要求又は質問についての協力の要請に対して、虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、若しくは虚偽の答弁をし、又は関係者に虚偽の答弁をさせたとき。
- 知事は、前項の規定よる公表をしようとするときは、あらかじめ、事業者に口頭で意見を述べ、又は意見書を提出する機会を与えなければならない。
- 知事は、第1項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、審議会の意見を聴かなければならない。
(施行事項)
第32条
この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。